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非営利組織による住宅事業

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最新更新日 2007/8/12

新しいお知らせ

「民間非営利組織による住宅事業:日本の実態と欧米との比較」を希望の方に配布します。
2007年3月、法政大学大学院人間社会研究科の博士論文(pdfファイル3.5mb)として私が執筆したA4版220ページあまりの原稿です。所属とお名前、どのような研究をされているかなど、できましたら最近書かれた論文等を添付して、メールにてお申し込みください。

文京区本郷で小規模な賃貸型コレクティブ住宅を計画しています。
都市政策の現状と都市再生について(pdfファイル230kb)
ー都市再生機構の役割、課題を考えるー 
   21世紀の住宅・都市政策研究会、2004年6月

 都市再生機構の役割はいかにあるべきなのか、これまでの役割と現状を分析し、今後の役割や公民の役割分担等について、研究会が報告書をまとめて、これをたたき台にして議論しています。私も一部、執筆しています。ご意見をお寄せください。

公団住宅の管理のあり方を考える
(住宅管理政策研究会・報告書)(pdfファイル150kb)

 76万戸の公団賃貸住宅は今後どのように管理をしていくべきなのか、都市公団労働組合の下で研究会が組織され報告書をまとめています。 

非営利組織による住宅事業の展開


 1980年以降、アメリカやイギリス等の世界の主要先進国では、低所得者向けの住宅事業の担い手は、公的な住宅供給組織から非営利組織に次第に移ってきた。
 アメリカでは1981年に登場したレーガン政権の下で福祉関連予算が削減され、住宅都市開発省の予算はレーガン政権下の8年間で大幅に削減された。公営住宅の新規建設戸数が急減して、維持管理費も削減されたが、公営住宅に代わって低所得者の住宅供給の担い手としてコミュニティ・デベロップメント・コーポレーション(CDC)が各地に設立された。
 イギリスでは1979年のサッチャー政権の下で公営住宅の居住者への払い下げが進められ、新規の公営住宅建設は次第に減少して、代わってハウジング・アソシエーションが新規の低所得者向け住宅(社会住宅)の供給の担い手となってきた。

 開発途上国でも、低所得者向け住宅の供給の担い手は、1960年代から70年代にかけては政府機関が取り組み、ローコスト住宅といわれる中層住宅が国家住宅公団(NHA)等により建設されたが資金が不十分でわずかな実績しかなく、また、実際の入居者は政府職員等になり、住宅地供給事業も遠隔地で低所得者のニーズには合致せず、次第に、NGOやCBO等の非営利組織に直接の担い手は代替され、政府はイネーブリング戦略をとるようになっている。

 日本では、非営利組織による住宅事業は、世界の各地で見られるような形態ではこれまでのところは進んでいない。これは、公的組織に対する国民性の違いや、国民の所得階層に貧富の差が極端にはなく、低所得者を対象とした住宅ニーズが一定の階層として明確には存在しないことなどが原因となっていると思われる。
 しかし、日本でも今後は非営利組織による住宅事業が、各地で展開するものと思われ、その萌芽は様々な住宅の形態で始まっている。膨大な財政赤字を抱えた日本社会では、高齢社会を迎えて、非営利組織による住宅事業を進めていくことは、避けられない方向と思われる。どのような制度的な後押しをすることで円滑に住宅政策の方向性をかえることができるのか、世界や日本の各地の事例を参考にして考えてみたい。


日本の非営利組織による住宅事業の展開


日本では、非営利組織というよりも非営利専門家が主として、住宅事業とかかわってきたが、ホームレスの中間住宅の建設やコレクティブ住宅などで非営利組織が住宅事業の担い手となるケースが各地で生じてきている。これらの活動を広げていくためには、事業の担い手となる人材の育成、事業資金の提供、福祉との連携などが課題となっている。
非営利組織が対象としている住宅事業は、高齢者住宅や敷地共同化事業、歴史的建築物の保存等、多様である。住宅に関連するコミュニティ活動や鳥緑地の保存などの環境問題も非営利組織がかかわっている。


途上国の非営利組織による住宅事業の展開


タイ、フィリピン、インドなどのアジア各国では、低所得者向けの住宅事業が非営利組織により実施されている。政府による直接的な住宅事業は、一般に、コストがかかり、居住者のニーズを十分に把握できずに失敗している。
これらの活動を国別等に紹介する。


先進国及び中進国の非営利組織による住宅事業の展開


アメリカやイギリスでは、国が補助をして地方自治体(地方住宅公社)が、建設・管理をしている公営住宅が減少している。代わって低所得者向けの住宅を供給管理しているのは非営利住宅組織である。フランスやドイツでは公営住宅の制度はなく、国が補助をする非営利住宅組織により、低所得者向けの住宅が供給・管理されてきた。他の先進国でも国や地方自治体の組織ではなく、また、民間の営利組織でもない非営利住宅組織が、低所得者向けの住宅を供給・管理している。
韓国は日本と同様に非営利組織はまだ未発達である。これらの活動を国別等に紹介する。


まとめ


日本の膨大な国債残高、財政赤字を考えると、今後、政府の住宅対策予算の増大は期待できず、他の先進諸国、開発途上国と同様に少ない住宅予算の中で効率の良い住宅政策を展開していくためには、非営利組織による住宅事業を促進していくことが必要である。

住宅事業を担う非営利組織を育成していくには、事業の担い手となる人材と組織が必要である。その際にひとつには、イギリスの公営住宅組織の職員が大部分がそのままにウジング・アソシエーションに切り替わるように、既存の公的住宅組織を非営利住宅組織に変更していくことが考えられる。しかし、日本では官庁組織から民間組織への体質転換は容易ではなく、これまでの第3セクターの失敗が示すように切り替えは相当な困難が伴うであろう。

タイの国家住宅公団(NHA)から都市コミュニティ開発組織(UCDO)が別組織として1992年に作られ、マイクロクレジットを手段として都市貧困層の居住地の改善を進めたように、日本でも公的住宅組織から一部を子会社のように分離、独立させて非営利住宅組織による住宅事業を展開することは、現実的な方策として十分考えられる。船橋市の都市公団が進めてきた宅地開発地区で元公団職員が設立した非営利組織がこのような事例のひとつのさきがけとなる可能性がある。

非営利専門家が長年の活動を経て次第に力を蓄えて住宅事業を担う事例も生まれている。山谷のホームレスの炊き出し事業などを継続していたふるさとの会は、ホームレスの住宅事業を数箇所で展開している。神田のとしまちづくり研究会は、都心居住を実現するための研究会を千代田区住宅公社の支援で継続してきて、中心となるゼネコン出身者が地域の不動産業者、設計事務所等とネットワークを組んで、敷地共同化によるマンション事業を展開している。

非営利住宅事業に関心をもち、就職を希望する若い人々は相当の数がいる。しかし、このような活動に従事しなが通常の所得を確保するのは並大抵のことではない。非営利はしばしば無報酬のボランティア活動とみられ、安定した収入を維持できる組織をつくることは企業家精神を持ったすぐれた実務家の出現に期待するしかない。定年退職者による非営利住宅組織が、これまでのところは残念ながら実際の事業展開するだけのエネルギーを持ちえていないようである。

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